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強烈な社会保険料のコスト増予測

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今回は色々と議論されている中でも

「経営者にとって影響がありそうな議題」

を3つ取り上げたいと思います。


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1.ほとんどのパート社員が

  社会保険対象となる

————–


今、世間をざわつかせているのが、

「106万円の壁」というものです。


社会保険の適用拡大によって、

現在51人以上の社会保険加入者が

いる会社では、週20時間以上かつ

月88,000円以上の給与だと

自分で社会保険に加入することに

なります。


(つまり、扶養から外れる)


これをどんな小さい会社でも

対象にするという議論があります。


「小さい会社だからという理由で

 社会保険に加入できないなんて

 働く社員がかわいそう!」


といった理屈です…。


これに対してニュースなどでは、

「それだと手取りが減る!」

といった”社員側目線”の話が

よく語られています。


ですが、実際は、経営者にも

相当なコスト増リスクがあります。


というのも、今までは

社会保険料がかかっていなかった

パートスタッフの社会保険料を

半額負担しないといけなくなる

わけです。


これって安くないですよ。


今まで月10万円の給与を払う

だけで良かったスタッフに

追加で大体月15,000円を払う

ことになるわけですから。


(いわゆる社会保険料の会社負担分)


この議論については、

既定路線のように進んでいましたが、

働く側にも反対意見が多いので

もしかしたら、少しだけ先延ばしの

余地はあるかもしれません。


ただ、15日の審議会の議論の中では、

「社員側の負担を減らして、

 会社側の負担を増やせるようにしよう

 (いわゆる折半以上の負担)」

という案まで出ていますので、

経営者側も他人事ではなくなって

きています。


引き続き、状況を注視していく

必要がありそうです。


————–

2.事前確定の社会保険料適正化

  スキームにメスが入る

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YouTube等で税理士やコンサルタントを

中心に語られまくっている

「事前確定届出給与を活用した

 社会保険料適正化のスキーム」

です。


このスキームが明確に審議会に

挙げられています。


このスキームの肝は

「標準賞与額の上限の活用」ですが、

議論の方向性としては、

「賞与の上限の引上げまたは

 上限の廃止に進むのではないか」

といった感じです。


そもそも、一般的なサラリーマンで

「標準賞与額の上限」を超える

ような人はかなり少数派です。


なので、標準賞与の上限額改定に

影響を受けるとしたら、

めちゃくちゃ年収の高い一部の人か

社会保険料適正化を目的とした

経営者だと思われます。

(という話も議論に出ています^^;)


この改定の影響は1の内容と違って

かなり限定的です。


よって、結構スピーディーな改定が

されるかもしれません。


————–

3.複数社勤務の社員の保険料按分

————–


現状の制度では、複数会社の

それぞれの労働時間が少ないと

「どこの会社でも社会保険に

 加入できない」ということに

なっています。


これを「合算した時間で判断できる

ようにする」という議論があります。


(相変わらず、それだと社会保険に

 加入できなくてかわいそう的な論理…^^;)


ですが、これを実現するハードルは

意外と高いようです。


行政側の事務負担の増加はもちろん、

それぞれの会社の労働時間を把握する

方法も確立されていません。


なので、この社会保険加入を実現するために

そういったハードルを解決する議論がされて

いるわけです。


そんな中、今回の話で出たのが

「保険料負担をどうするか?」

というものでした。


現在も複数社で社会保険対象となる場合、

保険料を按分して負担する制度となって

います。


ですが、そのためには、それぞれの会社で

社会保険の加入手続きをしたうえで、

「二以上事業所勤務届」を提出して

行政に按分の割合を決定してもらうことに

なります。


現状として、この手続きに該当するのは、

経営者が複数社を経営して所得を

分散しているケースくらいなので、

さほど面倒でもありません。


(それぞれの給与を把握できるため)


ですが、これが社員全体にまで

波及したら大変です。


どこでいくらの給与をもらっているかの

把握はもちろん、それぞれの会社が

お互いを気にすることなく昇給や減給を

するでしょうから、保険料按分の事務が

とんでもないことになります。


で。


今回、この問題を解決するために出た案が、

「それぞれの会社の給与に応じて

 社会保険料を負担させる」

というものです。


では、これが実現するとどうなるか?


たとえば、どこかでフルタイムで

働いている人があなたの会社に

週1日のパートで勤務していたとします。


あなたにとっては、

その人は単に「週1日のパート」

ですから、社会保険の対象だなんて

思っていません。


ですが、この制度が実現したら、

その人がどこかの会社で社会保険に

加入していた場合、急に社会保険料が

発生することになるわけです。


繰り返しになりますが、

社会保険料の会社負担は約15%なので、

いきなり人件費が15%アップです。


こうなると「副業としての社員」を

受け入れるハードルも上がってしまう

ことが想定されます。


ただ、この複数社勤務の議論については、

・労働時間を把握する方法

・社会保険料負担の方法

・行政の事務負担の増加

といったハードルがあるので、

他のものと比べると少し長期的な議論に

なっているようにみえます。


ということで。


今議論されている

社会保険の改定案について、

「経営者に影響しそうなもの」を

3つ取り上げてきました。


特に、1と3については

予測していなかった社会保険料が

急に発生する可能性があるものです。


中長期的なコスト対策としては、


・パート社員の採用を抑えて

 フルタイム社員を中心にする

・臨時的な労働力の補填には

 フリーランス等を活用する


といったことも考えていく必要が

あるかもしれませんね。