がんと向き合う(その2)
日本人の二人に一人はがんに罹患する可能性があり、65歳以降の雇用延長が努力義務化された現在では、企業ががんと仕事の両立支援に取り組む意義は大きいものがあります。
少子高齢化が進む中、社員の健康維持を重要に経営課題としてとらえ、企業・社員・医療保険者が一体となって健康経営に真剣に取り組むことで、企業の発展にも大きく寄与するところであります。とりわけ、中小企業においてはその6割以上が人手不足を感じている中で、特に熟練の中高年社員の健康維持、疾病、重症化予防は、これを怠ると企業の存続さえ揺るがしかねない事態が懸念されます。優秀な社員に健康で長く働いてもらう環境づくりこそが企業の使命であり、今後生き残っていく条件ではないでしょうか。
がん以外の疾病については別の機会にお話しするとして今回はがんと仕事の両立についてお話をします。
東京都福祉保健局の「がん患者の就労等に関する実態調査」(H26年と少々古いデータですが)によると、がんと仕事の両立で困難を感じていることの第一位は治療費が高い、働き方を変えたり休職すると収入が減少するといった経済的な問題は最も多いことは違いありませんが、体調や治療の状況に応じた柔軟な勤務、仕事内容の調整ができない、治療、経過観察、通院目的の休暇・休業が取りづらい、治療をしながら仕事をすることで自己評価が下がるといった働き方の問題も大きく指摘されています。経済的な問題があるので退職しない社員もいる一方で、治療しながら仕事ができる環境にないため退職してしまう社員も少なからず存在します。これはその社員が優秀であればあるほど企業にとっては大きな痛手となるわけです。