がんと向き合う(その1)
私は、母親を2013年に肺がんで亡くしました。もともとは62歳の時に発症した舌下腺腫という病気が原発でした。2004年に腫瘍の切除術を行い、精研の結果その時は悪性ではなかったものの、医師からは言語障害が残るかもしれないと告げられ、若いころから歌手を目指すくらい歌が好きだった母は、絶望するかと思いきや、「これで悪いところが全てなくなったから、思う存分歌える」と極めて前向きに病気と向き合いました。言語障害どころか、手術前より活舌がよくなっていました。
以前は一度がんにかかってしまうとあまり長く生きられない。というような話もありましたが、今は医療が進歩して、かつて不治の病とされたがんは、長く付き合う病気に変化しています。生存率も高まっていますので、いかにがんと付き合いながら生活していくかということが今の課題ではないでしょうか。
現に私の母親は、原発の腫瘍を除去してからその後肺などに転移して悪性化し、2回ほど手術を受けましたが、当初の余命をはるかに超えて10年間生存しました。亡くなったのは、まだ72歳と少し早い気はしましたが、何よりも幸いだったのは、最後は全身に転移して亡くなったなったわけですが、脳の痛みや苦しみを感じる部位にも転移し、まったく苦しまず、家族全員と最後のお別れのあいさつをしてから旅立つことができました。